レビー小体型認知症(DLB)の新診断基準

先週、レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)の新たな診断基準・治療ガイドラインがNeurology誌より発表されました。

McKeith IG, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017 Jun 7.

この改訂で、DLBの診断基準・治療ガイドラインは第3版となり、2005年に発表され、長らく用いられてきた第2版から、幾つか大きな変更が見られます。

その変更の大きな特徴が、レム睡眠行動異常症の重要性が高まったことと、MIBG心筋シンチがDaT Scanと同レベルに格上げされたこと、臨床的な特徴とバイオマーカーとを分けて提示されるようになったこと、です。

中心的特徴:注意、遂行機能、視覚認知機能の障害を明示

まず、臨床上の中心的特徴に関しては、DLBの診断に必須の項目として、第2版同様、進行性の認知機能低下として定義される認知症とされています。その特徴も、記憶障害は病初期には必ずしも起こらないが、進行とともに通常は明らかになる、という記載も変わりません。

この項目での変更は、「注意、遂行機能、視覚認知の検査における失点が特に顕著で初期から生じるかもしれない」と追記された点です。

これまでは、「記憶障害は軽い」というアルツハイマー病と対比した形でしか記載されていませんでしたが、具体的にDLBで初期から障害されやすい認知機能について言及されました。

中核的特徴:3大特徴にRBDが追加

DLBの臨床上の中核的特徴としては、第2版同様、
  • 変動を伴う動揺性の認知機能
  • 繰り返し出現する幻視
  • 特発性のパーキンソニズム
が挙げられていますが、第3版ではさらに、
  • レム睡眠行動異常症(認知機能低下より先行するかもしれない)
が加えられました。

これまで、DLBにはレム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder: RBD)の合併が多い、あるいは特発性RBD患者はDLBの前駆段階である、などと言われていましたが、それがここにきてDLBの4大特徴として追加されました。

実は、RBDだけでなく、レストレスレッグズ症候群(RLS)や睡眠時無呼吸症候群(SAS)もDLBでは合併率が高いことが知られており、DLBの睡眠関連の症状については、まだまだ今後診断基準に入ってくるかもしれません。

参考:Terzaghi M, et al. Analysis of video-polysomnographic sleep findings in dementia with Lewy bodies. Mov Disord. 2013 Sep;28(10):1416-23.
DLB患者のPSGから、RBDやSASの合併が多いこと、RLSで見られる周期性四肢運動が多く見られたことなどが報告されています。

支持的特徴:第2版の示唆的特徴と支持的特徴をまとめて整理

臨床上の支持的特徴としては、抗精神病薬への感受性、不安定性、繰り返す転倒、失神、高度の自律神経障害、過眠、低血圧、視覚以外の幻覚、系投下された妄想、アパシー、不安、抑うつが挙げられました。これらは、第2版で支持的特徴や示唆的特徴に挙げられていた臨床症状から、中核症状に格上げされたRBDとバイオマーカーに関連する項目以外がまとめられた感じです。

指標的バイオマーカー:DaT、MIBG、PSG

バイオマーカーに関する項目が臨床的特徴から切り離されたのが、第3版の1つの特徴です。その中でもIndicativeとされたものは、
  • 基底核でのドパミントランスポーター取り込み低下
  • MIBG心筋シンチによる異常(取り込み低下)
  • PSGでREM sleep without atoniaを確認
の3項目が挙げられています。

まず、何と言ってもMIBG心筋シンチがここに挙げられたことです。第2版ではMIBG心筋シンチの取り込み低下は支持的特徴に分類されていたため、仮に中核症状を1つしか認めず、possible DLBとまで診断していても、MIBG心筋シンチの異常ではprobable DLBと診断できませんでした。今回の改訂では、中核症状が1つしかない場合でも、MIBG心筋シンチの異常を認めれば、probable DLBと診断できることになります。

次に、PSGの所見です。REM sleep without atoniaは、RBDで見られる、REMステージでの筋活動が十分抑制されていない現象です。つまり、RBD関連所見がここでも取り上げられたことになります。

示唆的バイオマーカー:第2版の支持的特徴+CIS

バイオマーカーに関して、示唆的バイオマーカーとして以下の3つが挙げられました。
  • CT/MRIで内側側頭葉が比較的保たれる
  • SPECT/PETで後頭葉の取り込み低下を伴う全般性の取り込み低下(FDG-PETでのCingulate island signはあってもなくても良い)
  • 脳波での後方優位の徐波化
これらは、第2版でも支持的特徴に挙げられていたバイオマーカー所見ですが、若干変更があります。

まず、FDG-PETでの「Cingulate island sign(CIS)」です。これは、周囲の糖代謝低下と比較して、後部帯状回周囲の代謝が保たれているため、そこだけが島状に取り込みが目立つことを表したものです。ここ数年、DLBの機能画像所見として多く取り上げられるようになっていました。SPECTでも同様の所見が得られる可能性が高いですが、まだFDG-PETでのエビデンスしか集まっていないようです。

参考:Graff-Radford J, et al. Dementia with Lewy bodies: basis of cingulate island sign. Neurology. 2014 Aug 26;83(9):801-9.

もう1つは、脳波所見の部位と正常です。第2版では側頭葉の一過性鋭波という所見もあったのですが、今回の改訂で消されてしまいました。

probable DLBとpossible DLBの診断

以上を踏まえて、診断ですが、probable DLBは、
  • 臨床上の中核的特徴を2つ以上
  • 臨床上の中核的特徴は1つだが、指標的バイオマーカーが1つ以上あてはまる
  • バイオマーカーだけでprobable DLBと診断しない
となっています。やはり総合して、RBDとMIBGの存在感が大きくなっています。

RBDについては、レム睡眠行動異常症(RBD)の認知症診療における重要性-DLB診断基準改訂を受けてに追記しました。

続いて、possible DLBは、
  • 臨床上の中核的症状が1つだけで、指標的バイオマーカーは1つも当てはまらない
  • 1つ以上の指標的バイオマーカーがあてはまるが、臨床上の中核症状が1つもない
となります。

個人的には、新しい診断基準では、これまでpossible DLBと診断せざるをえなかった人達が、probable DLBと診断されるようになると感じています。今後どうなるか、興味深いです。


*2017/6/12現在、DLB診断基準第3版の正式な日本語訳は出ていません。この記事の日本語訳は「認知症疾患ガイドライン2010」などでも用いられている、「Lewy小体型認知症(DLB)臨床診断基準改訂版(第3回DLB国際ワークショップ)」の日本語訳で用いられている用語を踏襲しました。今後出版される正式な日本語訳と齟齬がある可能性があります。

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