英会話学習に見る言語習得の過程

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前回、私の英会話の勉強過程は、

1. 単語レベルでの聞き取り、復唱
2. 短文レベルでの聞き取り、復唱
3. パラグラフレベルでの聞き取り(、復唱)

を繰り返し行ってきた、と言いました。これ、よく考えてみたら、神経心理学的に言えば、語レベル、短文レベルと難易度を上げながら、聴覚的理解、言語性short term memory(STM)、発話を鍛えて行った、という、言語能力の習得過程だなあと気づきました(英語は言語なので当たり前ですが)。

このうち、少し前まで、自分の聴覚的理解が良くなっていることが楽しかったですし、それが目的になっていましたが、最近になって一番面白いなと実感しているのは、文レベルの復唱ができるようになってきているということです。勉強開始当初は、real英会話の短文は、聞き取れても復唱が不可能、ということがかなりあったのですが(良く考えると、この状態、伝導失語みたいになっていますね。もちろん、まだ私は英語の能力を獲得したことはないので、失語ではないのですが。)、今は概ね復唱が可能になりました。さて、これは私の言語性STMが大きくなって、以前は短期記憶で保持できなかった量を保持できるようになっているということなのでしょうか?


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short term memoryとマジカルナンバー7±2


言語性STMに関連して、「マジカルナンバー7±2」という言葉があります。これは7つまでのことなら短期記憶として覚えていられる(人によって2個前後の誤差があるけど)という法則を表したものです。

なぜマジカルかというと、例えば、

5528931011094

という数字の羅列を覚えようとすると、そのままだと私には無理です。13個もの数字を覚えておくのは、短期記憶の許容量を超えているからです。

しかし、これをこう切り分けてみて、

552 8931 011094
ここに 白菜 おいとくよ

と語呂合わせした途端に覚えられます。これはたったの3文節なので、短期記憶に収まるわけですね。つまり、「マジカル」の理由は、たとえ長くても、「7つ以内の塊」にしてしまえば覚えられる、ということですね。

他にも、初めて聞いた早口言葉でも、(正確に発音できるかは別として)復唱するために頭に保持しておくことはできますよね。例えば、

隣の客はよく柿食う客だ

という早口言葉は、音自体は16音の連なりですが、

隣の 客は よく 柿 食う 客だ

と6分節なので、頭に保持しておけるわけです。それどころか、多くの人にとっては、この文章は早口言葉の定番文句ですので、複数の文を覚える必要が出てきた場合、この文に関しては文そのものが1つの塊として短期記憶に保持できるはずです。

年末にサンシャイン斎藤が、「2741、船酔いって覚えてくださいー!!」と絶叫したせいで、未だに斎藤工さんのキャッシュカードの暗証番号が忘れられないのは、4つの数字どころか1つの塊にされてしまったため、短期記憶どころか長期記憶に定着し安かったからでしょうか。

言語習得の過程で、塊と認識されるものが大きくなった?


話が逸れましたが、つまり、私が英語の短文をだいぶ復唱できるようになってきたのは、私のSTMが大きくなった、というよりは、私の中でこれまで単語という塊で構成されていた英語が、徐々に熟語、文、というレベルの塊になりつつあるため、STMで保持されやすくなった、と考える方が妥当なのではないでしょうか。言語の習得は、ある時期からこのような、一塊として扱うものが大きくなっていく、という過程になるのかもしれません。

なんにせよ、こういう成長の実感があると、英語の勉強も楽しくなり、継続意欲が湧いてきますね。

STMと伝導失語

上で、聞いて理解できるけど復唱ができない、という状態を「伝導失語みたい」と書きましたが、STMの障害の結果、復唱ができず、錯語が頻出する失語のことを、伝導失語と言います。

この失語は、STMが障害され、短期記憶に保持できる量が減ってしまうため、復唱したい言葉を正確に覚えていられないために復唱障害が起こってしまう病態です。私は当然STMが障害されていたわけではありませんので、やはり勉強を通して復唱できるようになってきたのは、STMが大きくなったからではなく、塊として認識できるものが大きくなったからと考えるべきでしょう。

しかし、このSTMは保たれているが一塊として認識できるものが小さい、という新たな言語学習過程で一時的に生じた状態と、一塊として認識できるものが小さくなったわけではない(と思うのですが)がSTMが障害されてしまっている、という伝導失語の状態が、同じように復唱ができない、というのはなんだか面白いように思います。

それとも、伝導失語では一塊として認識できるものが小さくなってしまっている、ということも起こっているのでしょうか(数唱の成績が落ちることを考えると、少なくともSTMは障害されているのでしょうが)?なんだか興味が湧いてきました。

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