心理系の研究では、多くの項目からなるアンケートデータから因子を見出す、ということが行われることがあります。そのような時に用いるのが因子分析です。
因子分析をする場合には、抽出法と回転法を選択する必要があります。それぞれ、
抽出法:共通性を推定=因子を決定 |
回転法:因子負荷量を算出 |
という独立した過程になります。
抽出法の選択
因子分析の抽出法には主に最尤法(method of maximum likelihood)、最小二乗法、主因子法、主成分法などがあります。この中で最も良い推定が可能なのが最尤法なので、基本的には抽出法は最尤法を用いるべきなようです。しかし、最尤法はその精度ゆえに、不適解を出す可能性も高いようです。不適解かどうかの判断は、共通性が1以上の項目があるか、によります(因子分析では共通性+独自性=1という基本性質があるため)。
このような不適解となる代表的な理由として、サンプルサイズが小さい、局所的に相関が高い項目がある、項目数が多い、ということがあげられるようです。これについては、因子分析に限らず、多変量解析をうまくするために考慮すべき事項といえます。ですので、このような場合は、サンプルを増やす、項目を減らす、ということをまず考えるべきなようです。
それでも不適解になるようであれば、最小二乗法>主因子法(>主成分法)の順に抽出法を変えてみるのが良いようです。また、主因子法にしても、反復主因子法を用い、反復上限も100回程度にするのが良いとのことです。
因子分析における抽出法の選択 |
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各抽出法に関する解説などは、以下の参考サイトが非常に詳しいです。
参考サイト:http://norimune.net/705
回転法の選択
回転法にも色々ありますが、基本的にはプロマックス回転(promax rotation)で問題ないようです。多くの論文で使われています。しかし、1つのテストが複数の認知機能と関連する知能テストのような複雑な項目を含む際には、ジェオミン回転が勧められるそうです。
これ以上は今の私のキャパを超えました。また勉強していきます。
因子分析における回転法の選択 |
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回転法に関しても、以下の参考サイトで詳細に解説されています。
参考サイト:http://norimune.net/706
因子得点の算出
各サンプルにおける各因子の重みを因子得点と言います。これは、回転法で導かれた各項目の各因子に対する因子得点係数と、各サンプルの各項目の標準化した値との積の総和から計算されます。一般的に各サンプルの各因子得点は、統計ソフトが自動で計算して出力してくれますので、それを利用しましょう。
因子分析を使用している論文
'(("factor analysis") AND "maximum likelihood") AND promax' でPubMed検索してみると、全部で19件の論文がヒットしました。その中の一番最新の論文(Terada et al. Development and evaluation of a short version of the quality of life questionnaire for dementia. Int Psychogeriatr. 2015 Jan;27(1):103-10)を見てみると、31の項目からなるQOL-Dという評価尺度の短縮版を作成するために、"maximum likelihood factor analysis with promax rotation"を用いています。因子分析にて2つの因子を推定し、さらに因子負荷量を用いて、短縮版として必要な9項目を抽出しています。
何らかの統計手法を使う際に、実際にその手法を用いている先行研究を探すと、どのように使用しているか、どのようにそれを報告しているかが実際にわかり、参考になりますね。
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