論文執筆への意識改革—できる研究者の論文生産術

今回は最近読んだ一冊の本を紹介したいと思います。著者は心理学者であり、例として心理学系の研究や論文執筆についてあげていますが、全ての大学院生・研究者に役立つ本ではないか、と思う、オススメの一冊です。研究者を目指すのであれば、早いうちに一読し、意識を改革しておくといいのでは、と思いました。それが、「できる研究者の論文生産術 How to Write a Lot」です。


私が所属する教室では、大学院生の一番の仕事である研究は、共同研究でない限りは指導教官のチェックはそこまで厳しくないため締め切りがなく、怠惰に過ごしていると大した成果を出せず時間が経過してしまうことがあります。かくいう私も、最初の1年目はほとんど何の進捗もなく、2年目に後輩として入ってきた大学院生と一緒に研究を始めたような側面があります。もちろん、1年間研究室に所属していたので、その分の経験で私の方が早く進むのですが、それにしても、という感じでした。元々自堕落な性格なので、このような事態になることは当然の結果なのですが、これではいけないと、自分の中で締め切りとノルマを作り、研究をしていました。

締め切り作りで最も便利だったのは、学会発表です。学会発表のためには、抄録の締め切りに間に合わせてデータを解析し、抄録を作成して投稿し、学会の日までにそれをパワポスライドに仕上げ、発表せねばなりません。その過程でできた解析データを元に論文を作成する、というのが大学院2年目の私の研究の仕方でした。

ノルマについては、大まかな一年のノルマ(どの国際/国内学会でいくつ発表する、英語/日本語の原著論文を何本書く、など)、大まかな一月のノルマ(どの発表/論文に取り掛かる、など)、ある程度具体的な週のノルマ(この発表/論文のこの部分を仕上げる)を決めて、そのノルマをこなすことをしていました。論文を書くことは基本的に締め切りがない作業なので、他の仕事の隙間時間を見つけて書く、というふうにしていました。それでもなんとか論文は形になり、投稿、受理にいたりました。ただ、効率は悪いな、というのと、論文を書くことに対するしんどさを感じていました。

ですが、この本を読んで意識が変わりました。執筆時間は見つけるのではなく、スケジュールに組み込み「確保する」のだそうです。具体的に言えば、毎日でなくても、毎週決まった平日の勤務時間中に、1-2時間程度、他の事に決して邪魔されず、優先して執筆するまとまった時間スケジュールに優先的に組み込む、ということです。

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本の伝えたいメッセージそのものは非常にシンプルで、160ページ程度の本ですが、一気に短時間で読むことができます。しかし、研究が本分である大学院生にとって、この本で言われていることは非常に重要なことだと感じました。

早速この本に書かれていることを少しずつ実践し始めたのですが、研究に対する気持ちが前向きになったというか、これまであまり乗り気になれなかった研究計画書や助成金申請書に対しても、気が進むようになった気がします。

大学病院を始め、臨床医として勤務しつつ研究をしている場合、どうしても臨床業務が優先され、論文執筆などは後回しになるかと思います。しかし、やろうと思えば決まった時間を論文執筆に当てる、ということはそれでも可能ではないか、と感じました。大学院生であれば言わずもがなです。その中でよく、「まだデータが集まっていないから書こうにも書けない」という言い訳がありますが、そのような言い訳に対しても、「序論や方法、あるいは添え状などはデータが集まっていなくても書くことは可能」とスパッと論破されています。また、ここでいう執筆時間とは、論文だけではなく研究計画書なども含んでおり、そう言われると確かにどんなタイミングでも書くことは無限にあると感じます。そしてそもそも、データが集まる前から序論や方法を書いておくことは、いざデータが集まって解析しようとなった時に、その解析がスムーズになることにもつながると感じました。

大学院生の研究に向かうメンタルを整えるのに、この本の2〜4章は非常に役立つと感じました。また、個人的には5章は、英語の文章を書く上でのスキルとして書いてあることは少ないのですが、ずっとよくわからないでいたことに対する答えを用意してくれていたと感じた部分があり、参考になりました。

もし論文執筆がうまくいっていない、と思われているのであれば、手に取ってみてはどうでしょうか。



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