転倒・骨折のリスクファクターと予防

高齢者を診療していて、転倒などに伴う下肢の骨折を契機にADLががくんと落ちてしまうことを何度か経験しています。最近患者さんではないのですが、身近な知人で肋骨骨折、脛骨骨折が立て続けにあり、ますます転倒・骨折予防が気にかかってきたので、とりあえずまとめ。

骨折の主要原因・転倒—ADL低下や介護負担、死亡の原因にも


骨折の主要な原因は、その部位によらず転倒です。さらに、全転倒の5-10%に何らかの骨折が発生することも知られています。骨折の中でも特に大腿骨近位部骨折は、その後のADLに大きな影響を及ぼし、全転倒の1-2%に発生します。おいそれと転倒できない割合です。

転倒後は、骨折に伴う身体機能低下や疼痛による運動制限だけでなく、「転倒した」という事実から自信を喪失し、さらに活動低下を起こす(転倒後症候群)ことで、廃用症候群を起こしたり、ADLの低下を招く原因となります。そしてそこから、介護負担の増加にもつながっていきます。実際に、骨折転倒は、要支援・要介護となる原因としても比較的多いものになっています。ですので、転倒後の疼痛に対して、安静の指示はその適応範囲と期間に注意して、最小限にする必要があります。本人が「痛い」と言っていても、実は転倒後症候群で嫌がっているだけで、介助をして試してみると立位や歩行が可能である、ということもしばしばあるようですので、周囲の介入が重要になります。
参考: http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/index.html

また、骨折にとどまらず、転倒は、転落も含めると、高齢化を迎える日本においては、不慮の事故死の原因の約20%を占め、割合としては窒息に続いて第2位に登ります。若年者では交通事故が圧倒的に多く、高齢になるにつれ、転倒・転落の割合が大きくなっていますし、高齢化社会が進むにつれ、件数も増加傾向にあります。
参考: http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei14/index.html

転倒のリスクファクター


転倒のリスクファクターとしては、床の滑りやすさや周囲の明るさなどの環境要因や、バランス障害、筋力低下、視力低下などの身体要因、認知症などの精神疾患による要因が挙げられます。そのため、環境調整や、リハビリテーションによる機能維持が非常に重要になります。最近、介護認定の主治医意見書で、リハビリによる機能維持の重要性を追記することが自分の中でほぼ常になってきたように思います。
参考: http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=185213

その一方で、医師として転倒のリスクファクターの中でいつも心に留めているのが、薬剤です。特に精神科医としては、向精神薬が薬剤の中でも大きなリスクファクターであることを注意しています。
この話はかなり長くなりそうなので、また機会があればまとめようと思います。
睡眠薬と転倒に関して、別のエントリーにまとめました。

転倒骨折予防策


転倒予防にやはり一番効果的なのは、運動のようです。歩行やバランス訓練、筋力増強、一般的な身体活動、ストレッチなど、複数の要素を取り入れたプログラムが良いようです。
参考: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD007146.pub3/abstract;jsessionid=B9649B0F37F5E77A90116D0E4F936740.f03t01

その他にも、自宅のリフォームなどの環境調整や服薬調整、視力補正などの効果も知られていますが、これらは単独での効果より、運動に付加することで有効性が高まるようです。
参考: http://www.bmj.com/content/325/7356/128.long

また、仮に転倒しても、骨折を予防することを考慮することも効果的です。ヒッププロテクターの着用や、床を衝撃吸収する素材にしたり、受身のトレーニングをしたり、という対応の有効性が知られています。受身のトレーニングと聞いて、転倒して機敏に受身を取って立ち上がる高齢者を想像してしまいましたが、そもそもそんな方は転倒リスクが低いですね。
参考:http://ageing.oxfordjournals.org/content/42/5/633.long
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00198-009-0934-x


転倒・骨折について色々見てみましたが、予防の観点からは、転倒しない、転倒しても骨折しないような体づくり(運動)がやはり一番重要なようです。運動には認知症予防効果も言われていますが、運動習慣をいかにつけていくかが、今後、私自身に取っても課題になっていきそうです。

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