過剰に処方される抗認知症薬-原因を探り、対策を考える

前回(抗認知症薬は効かないのか?)は、あまり効果が実感しにくい抗認知症薬も、効果がしっかりある人もいるので、フランスで医療保険から外れると心配だなぁ、という、私が抗認知症薬肯定の立場にいることを表した感じの内容でした。 ただ、現状の日本での抗認知症薬の処方のされ方の実態に肯定的か、というと、むしろ否定的です。その理由は、どう考えても不適切な状況で処方されている例が多いからです。そんな気持ちから、前回のツイートの後、次のようなツイートをした所、多くの反応をいただきました。 抗認知症薬の処方過剰問題はいくつかの要因が重なっていると思います。①ADと誤診②認知症なら何でも抗認知症薬、という誤用③DLB等他の疾患ではない認知症をADと診断④副作用モニタリング不足⑤抗認知症薬の使用目的の不明瞭化⑥患者、家族の内服希望パッと思い浮かぶだけでこれくらいはある。— HJKKS (@MRLH_gon) 2018年6月7日 そんな、不適切な状況での抗認知症薬の処方について、どんな例があるのか、思いつくままにあげてみたいと思います。 *できる限り、エビデンスや自身の経験、今回twitterで出会った意見の中でも現実的と思われるものに則って、現実に即したことを書こうと思いますが、匿名の医師の無責任な個人的見解という範疇を出ないことも事実かと思いますので、ご注意いただければ幸いです。 目次:抗認知症薬が不適切に処方されるケース 適応でないケースへの処方 …

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抗認知症薬は効かないのか?

先日、twitterで何気なくした引用リツイートに、意外といいねとRTをいただきまして、認知症の薬物療法は本当に多くの課題を抱えているなぁと感じました。 共感いただいたり、ご指摘をいただいたり、なるほどと思わされることがあったり、twitterって結構勉強になりますね(笑) その引用リツイートがこんな内容。 抗認知症薬はAD、DLBに適応があるものの、多くの方で余り効果が感じられず、副作用のリスクがあるのは事実。一方で若年性ADやDLBの人など、抗認知症薬が劇的に効き、生活そのものが根本的に改善される方がいるのも事実。後者の方の不利益にならない事を願います。 https://t.co/AIof2ewX0Y— HJKKS (@MRLH_gon) 2018年6月6日 せっかく勉強になったので、そのことをまとめてみたいと思います。 *できる限り、エビデンスや自身の経験、今回twitterで出会った意見の中でも現実的と思われるものに則って、現実に即したことを書こうと思いますが、匿名の医師の無責任な個人的見解という範疇を出ないことも事実かと思いますので、ご注意いただければ幸いです。 目次 抗認知症薬とは フランスで抗認知症薬が医療保険から外れる 抗認知症薬の効果は小さいのか 抗認知症薬が劇的に効く人もいる 顕著に効く方が比較的多い若年性ADとDLB…

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BPSDケアプログラム:非薬物的対応のエビデンス

日経メディカルで興味深い記事を見つけました。「BPSDケアプログラムの効果をRCTで証明」とのことです。 問題行動の背景を見える化、ケア計画を この記事の後半で、オンラインシステムを利用した「BPSDケアプログラム」について紹介されています。 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知障害以上に患者本人のQOLや介護負担に影響することが知られています。現時点で多くの認知症患者さんで改善が見込めない認知障害に対し、BPSDは脳の障害という器質的な要因だけでなく、環境要因によって生じている側面が大きいため、認知症診療において治療ターゲットとなる症状です。 スポンサードリンク BPSDの治療は、原則的に非薬物的対応(ケアの工夫だけでなく、音楽療法や回想法、認知行動療法などの非薬物治療を含む)を優先し、それでも効果がない場合は薬物治療を行う、と、認知症関連のガイドラインでも書かれていますが、非薬物的対応に関しての確固たる情報はあまりありません。というのも、特定の非薬物治療に関するエビデンスは非常に乏しく、「ケアの工夫」に至っては、各患者さんがBPSDを引き起こす原因は様々なため、どのような工夫をするかは千差万別で、なかなか個別のケア方法を検証するstudyができないからです。 実際に、BPSDに対するガイドラインとして、「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第2版)」が広まりましたが、これは…

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認知症への理解の低さはこんなもの

今日は研究デザインのことですごく基本的なことを調べようと思い、いくつかそれっぽい文献を読んでいたのですが、その中の2016年の某雑誌に掲載されていた、公衆衛生学の先生の文献での下記の記載を見て、愕然。 「(認知症発症というアウトカムの要因を調べたいコホート研究で)研究を質問票のみでする場合、認知症発症診断テストMMSEの質問項目に入れておけば、認知症発症を調べる事ができます。」 絶句。 まず、そもそも日本語としてなんかおかしい、ということは眼を瞑りましょう。そんな瑣末なことより、です。 MMSEに認知症発症診断テスト、などという二つ名が付いているのを初めて見ました。 私はMMSE(Mini-Mental State Examination)は非常に優れた検査だと思っています。認知症の方に限らず、様々な疾患で、精神状態(Mental State)を評価するにあたり、多角的な認知機能をベッドサイドで簡単に評価できるため、頻繁に実施しています。各項目でどのような反応をするか、という定性的な見方をすると、それこそ、単純に認知症というだけでなく、アルツハイマー型認知症なのか、レビー小体型認知症なのか、などの背景疾患を想定するのにも用いる事ができます。 一方で、この「認知症発症診断テスト」という言い方は、おそらく「何点以下なら認知症、それ以上なら認知症じゃない」という結果が出せるテスト、というニュアンスで書いているのでしょう。実際に、研究でMMSEを入れておけば認知症発…

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