"elderly"という表記は高齢者差別的だそうです。

日本語である特定の言葉が差別的な用語として使われなくなるのと同じように、英語でも当然使うべきではない、という用語が時代とともに出てきます。先日、投稿前の論文を英語校正に出したところ、今まであまり気に留めず使っていた、あるいは論文で使われているのを目にしていた単語が差別用語なので避けた方が良い、と指摘されました。 それが "elderly"です。 認知症関連の論文を書いていて、今まで何気なく使っていたのですが、確かにこんなソースがありました。 Use of the Term "Elderly" : Journal of Geriatric Physical TherapyAvers, Dale DPT, PhD; Brown, Marybeth PT, PhD, FAPTA; Chui, Kevin K. PT, DPT, PhD, OCS, GCS; Wong, Rita A. PT, PhD; Lusardi, Michelle PT, DPT, PhD The terms senile, demented, and aged are unfortunate terms once in common use among physical therapy personnel. この中で、"The term elderly is ageist."(elderlyという単語は高齢者差別です。)とはっきり明言され、senile、demented、agedという…

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MendeleyでWord上に引用文献を追加しようとするとエラーが出るアップデート直後のバグ

Mendeleyをアップデートした直後にWordで引用文献を挿入しようとしたところ、何度やっても以下のエラーメッセージが表示され、引用文献の挿入ができなかったので、解決法について(2019年2月22日時点)。 Citation/Bibliography is wrongly placed in index area, please delete the placed citation/bibliography in index area. ひとまず論文を書き上げて、共著者に内容チェックをしてもらったところ、一部に引用文献を追加するよう指摘をいただき、それを追加しようと思っていたところなのですが、当然それまで普通にMendeleyで引用文献を挿入できていたそのWordファイルが、突然上記エラーを出して挿入できなくなったのです。 先日Mendeleyのアップデートをしていたので、旧バージョンとの整合性がうまく取れていないせいでこのバグが起こっているようです。 よく見ると、このエラーメッセージが起きると、Wordファイルが自動的に決まって同じところを表示します。ハイライトもポインタも表示されないのでわかりにくいですが、エラー個所を表示してくれているようです。十字キーを押すとエラーを起こしている引用文献挿入個所がわかるので、それでエラー個所を特定し、一度その部分の引用を削除し、再挿入すると、このエラーが出なくなります。 このエラーを起こしている…

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エラーバー付き棒グラフをエクセルで作る@Excel for Mac Version 16

以前、エラーバー付き棒グラフをエクセルで作るという記事を書いたところ、意外と需要があったようです。 エラーバー付き棒グラフをエクセルで作る統計解析結果のグラフでは、平均値に標準偏差を一緒に表したエラーバー付きの棒グラフが用いられることが頻繁にあります。そんなエラーバーをエクセルで作ったグラフに表示する方法をまとめます。 目標はこんなグラフを作ることです。 しかし、Excel for Macのバージョンが変わり、やり方が若干変わったので、新しいバージョンに合わせた作り方を紹介したいと思います。 今回は前回からさらにバージョンアップし、エラーバーの上値と下値が違う場合の作り方を紹介したいと思います。目標は、左のテーブルから右のグラフを作ることです。 目次 エラーバー付き棒グラフを作る せっかくなので論文で使えるような書式にする スポンサーリンク エラーバー付き棒グラフを作る まず、データとして、グラフの値と、エラーバーの上端下端を決める「正の誤差範囲」と「負の誤差範囲」を3行に並べたテーブルを作りましょう。グラフの値からの「誤差範囲」なので、値とエラーバーの上端下端との差で表現します。 ラベルの行と値の行を選択し、「挿入」タブの棒グラフをクリックします。(グラフのタイトルはブログ用に「エラーバー付き棒グラフ」としておきました。) できたグラフをクリックすると…

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BPSDは病前性格の影響を受ける【ぼっちJC】

Abstract 認知症の人に見られる行動・心理症状(BPSD)は、認知症に伴う脳機能の低下と環境要因によって生じると言われますが、同じ病気、同じような環境でもBPSDの出方には個人差があります。その個人差の要因として、病前性格にスポットを当てた論文です。DLBとADにおける角疾患では非特異的と言えるBPSDが、病前性格と関与している、という結果に見えます。 認知症の人のケアをする上で、行動・心理症状(BPSD)は避けて通れない道です。BPSDは認知症による脳機能の低下と環境要因によって生じると言われ、その対応にはまず非薬物的対応を行い、それでもどうしても解決しない場合、薬物療法を試みる、というのがガイドライン的な対応になります。 教科書的な理想論を言えば周囲がうまく対応すれば予防できる、抑えることができる、というものですが、同じ疾患で同じようなBPSDが出ても、同じ対応ではうまくいかないことは多々あります。そもそも、同じ疾患、同じような環境にいても、同じBPSDが出るわけではありません。 認知症の人がそれまで歩んできた人生が、当然その人のBPSDの出現の仕方にも影響を与えるわけです。その歩んできた人生の一つの指標として、「病前性格」がどのようにBPSDに関わるか、というテーマの論文が、今回のぼっちJCの題材です。 Tabata K, et al. Association of premorbid personality with behavioral and p…

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Excelのピボットテーブルを使ってデータ集計する

Abstract Excelでピボットテーブルという便利な機能があります。それを使ってデータ集計する方法を実例を使ってまとめました。ついでにPubMedのデータからExcelの区切り位置ウィザードを使って、各論文の掲載雑誌を抽出する方法も。 前回(精神科症例報告を載せる英文雑誌)、pubmedでダウンロードしたcsvファイルから、”delusional disorder”で引っかかるここ10年のCase Reportsがどの雑誌で何本出版されているかを集計しましたが、この集計はエクセルを使うとそれなりに簡単にできます。その手順を簡単にまとめ。 なお、使っているのはMicrosoft(R) Excel for Mac バージョン16.16.1です、バージョンによって少しずつ各機能のボタンの場所が変わっているので、面倒ですが、基本のやり方は他のバージョンでも同じです。 目次 エクセルの「区切り位置」ウィザードで雑誌名を抽出 エクセルの「ピボットテーブル」で集計 関連記事 スポンサーリンク エクセルの「区切り位置」ウィザードで雑誌名を抽出 まず、前回検索結果に対して”Send to”→”File”→”CSV”で作成したCSVファイルを見て見ます。最初の数行はこんな感じ。 この中で雑誌名を抽出するのに向いているのが、E列の”ShortDetails”になります。この…

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精神科の症例報告を掲載する英文ジャーナル-妄想性障害の場合

Abstract 精神疾患の1つ・妄想性障害の症例報告を出版した英文ジャーナルを、2018年9月時点での過去10年間分だけPubMedから拾い上げて集計しました。精神科疾患で英語で症例報告を書こうとされている方、投稿先選びの参考になれば幸いです。 Introduction 最近妄想性障害の症例報告を英語で書いてみようかと思っているのですが、最近どんな雑誌で精神科の症例報告が載っているかよく知りません。 神経疾患については、2015年のものですが、「後期レジデントがつづるノート」というブログで紹介されているのですが、精神科領域の雑誌についてはあまりこのような情報を目にしたことがありません。 そこで今回は、過去10年で妄想性障害に関する症例報告を出版している英文ジャーナルをPubMedで調べてみました。 目次 Results: 過去10年で妄想性障害の症例報告を掲載した英文雑誌一覧 Methods: PubMedでのデータの取り出し方 スポンサーリンク Results:過去10年で妄想性障害の症例報告を掲載した英文雑誌一覧 まずは結果から。PubMedで”delusional disorder”で検索し、過去10年のCase Reportsをピックアップした結果、掲載雑誌と論文数は次の通りです。 上位2つのジャーナルClin neuropharmacolとJ Ne…

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認知症への理解の低さはこんなもの

今日は研究デザインのことですごく基本的なことを調べようと思い、いくつかそれっぽい文献を読んでいたのですが、その中の2016年の某雑誌に掲載されていた、公衆衛生学の先生の文献での下記の記載を見て、愕然。 「(認知症発症というアウトカムの要因を調べたいコホート研究で)研究を質問票のみでする場合、認知症発症診断テストMMSEの質問項目に入れておけば、認知症発症を調べる事ができます。」 絶句。 まず、そもそも日本語としてなんかおかしい、ということは眼を瞑りましょう。そんな瑣末なことより、です。 MMSEに認知症発症診断テスト、などという二つ名が付いているのを初めて見ました。 私はMMSE(Mini-Mental State Examination)は非常に優れた検査だと思っています。認知症の方に限らず、様々な疾患で、精神状態(Mental State)を評価するにあたり、多角的な認知機能をベッドサイドで簡単に評価できるため、頻繁に実施しています。各項目でどのような反応をするか、という定性的な見方をすると、それこそ、単純に認知症というだけでなく、アルツハイマー型認知症なのか、レビー小体型認知症なのか、などの背景疾患を想定するのにも用いる事ができます。 一方で、この「認知症発症診断テスト」という言い方は、おそらく「何点以下なら認知症、それ以上なら認知症じゃない」という結果が出せるテスト、というニュアンスで書いているのでしょう。実際に、研究でMMSEを入れておけば認知症発…

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高校数学で語るp値(後編)

前回に引き続き、高校数学でかたるp値後編。 前回はとりあえず、ごくごく簡単な例で、p値ってこういう感じというのを高校数学でわかる例でみてみました。今回はその例を応用して、p値の注意点と効果量についてがテーマです。 目次 前編の例のおさらい サンプルサイズと検出力 p値の注意点と効果量 サンプルサイズ設計 関連記事 前編の例のおさらい 後編の本題に移る前に、前編の例を再掲しておきます。 イカサマコイン例1あるコインを10回投げたところ、表が2回、裏が8回出るという結果になった。このコインは裏の出やすいイカサマコインか? これを仮説検定する場合、帰無仮説は 帰無仮説:このコインはイカサマコインではない(=確率0.5でそれぞれ表裏が出る) となり、今回のp値は「10回中表が2以下しか出ない、または裏が2回以下しか出ない」という状況の確率として以下のように計算されます。 p=2×(10C2+10C1+10C0)×(0.5)10=0.1093 ということで、p値が0.05を下回りませんでした。10回中2回しか表が出ない、というのは、普通のコインでもそこそこ起こることなので、このコインはイカサマコインとは言えないわけでした。 スポンサードリンク サンプルサイズと検出力 …

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高校数学で語るp値(前編)

昔、高校生からp値ってなに?と聞かれたことがあり、その時に話したことを修士の大学院生に説明すると、意外と受けがいいことがあるので、そろそろ高校数学を忘れている自分の備忘録として(笑) 高校レベルの数学で理解できる内容にするため、実際に統計で行なっている検定とは異なる例をあげていますが、とりあえずp値ってどんなものかがわかるようにしたものですので、ご了承ください。 目次 帰無仮説と対立仮説 p値は帰無仮説下でその出来事(+よりレアなこと)が起こる確率 高校数学で語るp値-このコインはイカサマコインか? 関連記事 スポンサードリンク 帰無仮説と対立仮説 医学の世界では、新薬の有効性を調べる、などの研究を行う際、新薬を投与した群と偽薬を投与した群とで結果がどう異なるかを調べて評価するわけですが、両群で見られた結果の差が「偶然起こった差ではないだろう」ということを評価するために、仮説検定という立場をとります。簡単にするため、以下は新薬投与群と偽薬投与群という2群に対する評価を行う場合について書いていきます。 新薬投与群と偽薬投与群で、仮に新薬投与群の方が良い結果となる人の割合が高かったとします。その割合の違いは、新薬が本当に有効なので起こった違いなのでしょうか?それとも、同じ程度だけど単なる誤差として起こったことでしょうか? 仮説検定では、「新薬と偽薬に差はない(=両群の結果の差は…

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アメリカ予算失効とpubmed

すごく久しぶりに投稿します。 研究で忙しかったのは自分にとって良いことですが、少しさみしかったです。 とはいえ、今日の投稿はほとんど中身がなく、珍しい状況に出くわしたので、記録としての投稿です。 まずは、今回出くわした珍しい状況の前提にある、世界情勢についてです。 アメリカ政府機関:予算失効で4年ぶりに閉鎖 アメリカの予算が議会の期間中に決められず、失効した影響で、アメリカ政府機関の一部が閉鎖された、ということだそうです。 ニュースでそんなことを耳にはしていましたが、自分には関係ない世界のことだな、と思っていたところ、pubmedを開いてすぐ、違和感が。 赤いアラートが出てる・・・。 予算失効の影響で、pubmedの内容がupdateできないかもしれない、ということだそうです。 少なくとも、怪しいアラートではなさそうで良かったですが、予算失効のニュースを知らずにこの画面を見ていたら、不振に思っていたでしょうね。 検索も普段通りできますし、今のところ最新の論文も引っかかりましたので、大きな影響はまだなさそうです。 "閉鎖部局を極力少なくし、国民生活への影響が大きい部局は閉鎖対象から外される"とのことですので、NIHは開いているそうですし、今後もpubmedへの影響はないのかもしれませんが、NIHの他の業務はともかく、pubmed検索は国民生活への影響は大きくはないように思いますので、予算失効が長引けば、比較的早くに閉鎖対象になったりして・・・。

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